函館市の都市伝説

 函館市の戸井町にある戸井漁港の沖合に武井ノ島 (むいのしま) という岩礁がある。ムイとはアイヌ語で箕 (みの) を意味し, 岩礁の名前の由来は, 箕に似ていることに由来すると考えられている。昔, この海域にムイ (オオバンヒザラガイ) とアワビが雑居していたが,アワビは貝殻で武装していないオオバンヒザラガイのことを骨なしの意気地なしと軽蔑していたが, ムイのほうも固い岩のような家をかぶって這い回り, 話をかけても, 顔も見せずに返事をしないアワビを頑固者として毛ざらつけていた。これが原因となって両方の間に戦いを起こした。海底での戦いは容易に勝負が決まらずお互いの損得が多いので, 話し合いの結果, 仲直りをし, このムイの岩礁を境にして西はアワビの領地, 東はムイの国として住むようになった。オオバンヒザラガイCryptochiton stelleri (Middendorff, 1847) は世界最大のヒザラガイ類 (八枚の貝殻を持つ貝) で, 約40cmまで成長します。八枚の貝殻がバラバラになって, 海岸に打ち上げられることがあります。貝殻はチョウチョのような形をしていて, とてもかわいいものです。実は, オオバンヒザラガイの貝殻は軟体部に隠れていて, 生きている状態では, 外側から貝殻を見ることは出来ません。




 貝殻は軟体部に埋もれているため, 外側からは見ることができません。表面は顕微鏡で見ると, 鋭い棘で覆われています。白い八枚の貝殻は, 軟体部から取り除いた物です。





 上の写真は生きている時の写真です。しっかり岩の上にくっついています。吸着力は強く, なかなか岩から剥がれません。また, 周辺の色と軟体部は似たような色をしているため, なかなか見つけることは出来ません。





 上の写真は軟X線写真で撮影したものです。八枚の貝殻が軟体部に埋もれて並んでいるのがわかります。


 喧嘩の現場となったのが, 下の地図にある函館市戸井町の沖合に位置する武井ノ島 (むいのしま)。



大きな地図で見る

 両者の喧嘩の結果, 武井の島を境に西側はアワビの国で東側がムイの国で, お互いが同所的に分布しなくなった。実際は, 武井ノ島付近は2種が同所的に生息しているが, この島を境界におおよそ2種の分布が分かれている。





 上の写真は武井ノ島展望台からから武井の島を撮影した写真。オオバンヒザラガイの貝殻が4つ並んでいるように見える。

inserted by FC2 system